情報、誤報、偽情報(または『これはおまえさんたちが探しているドロイドではないぞ』 - スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望より)パート2

文部科学省の放射線モニタリングポスト、通称「ドロイド」。この写真のドロイドはNEC製造でごく一般的なタイプです。これは会津美里町の旧赤沢小学校前に設置されているものです。

政府のモニタリングポスト

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ここ数ヵ月、福島県内および福島隣県に設置された放射線モニタリングポストの精度について活発な議論が交わされていますが、セーフキャストは、この件に関して2012年7月の時点で既にブログ記事を執筆しています。

“改善された”モニタリングポストで 放射線・線量レベルをごまかす東京電力(TEPCO)

約2700基のモニタリングポスト(現時点では675基が確認済み)が設置されています。見た目がスター・ウォーズのR2D2に似ていることから、セーフキャストのメンバー間では親しみをこめて「ドロイド」と呼んでいます(上記写真を参照)。電源は装備された太陽光パネルと内蔵バッテリーから供給されます。文部科学省を介し、政府は巨額を投資して(正確な金額は定かではありませんが)モニタリングポストを設置し、更に資金を投入して空間放射線量測定値が閲覧できる専用ウェブサイトを作りました。

リンク:文部科学省 リアルタイム線量測定システム 環境放射能水準調査結果のページへ

このウェブサイト、見た目はなかなかの出来です。サイト利用者は知りたい県をクリックし、更に特定地区をクリックすると、各地方自治体を選べるようになっています。スクロール・リストが右側に現れるので、特定のモニタリングポストを選べば、その地点の測定線量値を確認することができます。(例えば、福島県郡山市の場合、393基のモニタリングポストがスクローリング・リストに表示されます。) ズームイン、ズームアウト、また、スクロールもできるGoogle Fusionマップも現れ、各モニタリングポストが丸い彩色点で表示されます。この青い点をクリックすれば、現時点での各地点の放射線量を確かめることができます。線量は10分ごとに更新されており、1ヶ月分のデータをまとめてダウンロードすることもできます。このようなデータを文部科学省(以下、文科相)が提供してくれるというのは、ありがたいことです。

その一方で、このシステムは呆れてしまうぐらい問題を抱えています。文部科学省のモニタリングポスト測定値とセーフキャストの測定値の比較調査をしていて分かったのは、このシステムでは、1回のサーチでは福島県内のごく限られた1地点の情報しか分からないという点です。ある特定の場所の情報を捜し出すにはかなりの時間がかかってしまい、イライラします。累積時間によるデータ推移を知りたくても、過去のデータにさかのぼれません。また、ダウンロードできるデータには様々な制約がついていたり、効率よく探したい場所の測定値を探し出すのが難しい作りになっているのです。そうなのです、文科省はこのシステムを 「出来るだけ使いにくいように」(ADAP:As Difficult As Possible)作っているのです。


これは文科省のオンライン・システムで福島県川内小学校近辺のデータを表示した画面のスクリーン・ショットです。青い点は固定型モニタリンポストを表し、青いダイアモンド型は可搬型の小型機器での測定値を意味します。青い点を一つ選んでクリックしてみると、線量が毎時0.093マイクロシーベルトと表示されました。上記の地図では、この場所には2基の固定型モニタリングポストが比較的距離を置いて設置されていることになっているのですが、実際にはほぼ隣接して設置されています(下方、3つ目の画像を参照)。


では、同地域のセーフキャストのマップを見てみましょう。2012年11月9日に川内小学校に隣接した道路の放射線量をbガイギー(bGeigie)で測定した際の数値は毎時0.12~0.17マイクロシーベルトの範囲内でした。学校を挟んで南北の方向に同じ道路を車で移動しながら測定してみると、毎時0.18マイクロシーベルトという測定値が検出されました。一年前にも同小学校脇でセーフキャストによる線量測定を実施したのですが、その際には毎時0.14~0.25マイクロシーベルトの範囲内の数値が検出され、学校から北に向かって車を走らせた際には毎時0.29マイクロシーベルトの数値が記録されました。近距離内でも移動すれば測定値が倍以上の数値に上昇するのはよくあることです。このごく最近の測定値から分かるのは、モニタリングポストが設置されている校庭も、その隣接している道路も、昨年(2011年)以降ずっと汚染されたままになっているという事実です(あるブロガーの報告では、校庭を越えた地域もかなり汚染されているとのことでした)。文科省はある特定地域の線量データを知りたい人や簡単に線量を知りたい人にとっては、比較的容易にデータ・アクセスできるようにしていましたが、このデータを他のデータセットと比較したりするのは非常に難しく、労力が要ります。また、政府が提供するデータよりもセーフキャストのデータのほうが、はるかに多くの地点で測定した線量データを一般公開していることに気づきます。


私たちは、一般の方々がセーフキャストのマップをどのような形で利用してくれるのだろうか、また、どんな情報を知りたがっているのだろう、という点について考えてきました。ほとんどの人はまずズームアウトした状態で見て、それから詳細情報を得るためにズームインするのではないでしょうか。セーフキャストのシステムならば、どの表示拡大レベルからでも各サンプル地点の測定値をまとめて一度に表示することができますし、どんどんズームインしていけば、サンプル地点にはどのような場所が含まれているか、いつ測定されたのかといった詳細情報も確認することができます。
文科省のシステムを見る限り、一般の人々は、ある地域の放射線量平均値だけでなく個々のサンプル地点のデータも知りたがっているということを認識しているとは思えません。事故から2年近くが経とうとしていますが、政府は依然として一般市民にとって使いづらい形でしか放射線マップ情報を提供してくれていないのです。


これは川内市に設置された2基のモニタリングポストの写真。ひとつは富士電機製、もう一つはライノテック工業製のもの。2メートルと離れていない距離に設置されているが、文科省の地図には明らかに100メートル程度離れて設置されているように表示されています。セーフキャストはこのような重複して設置されたモニタリングポストをいくつもの場所で見ていますが、中にはその場所が学校だというケースが多くありました。そして、重複設置の理由が何なのかという納得できる説明を、政府から聞いていません。故障時用の予備として2基設置したのか、それとも地面から1メートルと50センチの2地点の線量を測定するためのものなのか、はたまた契約ミスによるものなのか、そこまではわかっていません。
後者の場合、相反する放射線線量が測定されてしまったらデータの扱いはどうするつもりなのでしょうか。答えは未だに見つかっていません。セーフキャストでは、当ブログにモニタリングポストに関する記事を初投稿した時点で、設置方法や設置場所に問題があったのだろうと考えていました。当時、大勢のジャーナリストや大学教授たちは、モニタリングポストの測定値がその周辺地域で測定された数値よりもはるかに低く表示されていたこと、また、モニタリングポスト周辺の地面が除染されているか、表面の土の入れ替え作業を行ったのではないかと指摘していました。
最新情報:その後、理由が明確になりました。政府がライノテック社製を600台ほど設置した後、一方的にライノテック工業(アルファ通信社)への契約を破棄し、富士電機とNECと契約を交わしたということでした。詳細は下に。

他の市民団体、「市民と科学者の内部被ばく問題研究会」もこの問題を更に掘り下げ、2012年10月に調査結果を発表しています。

リンク::市民と科学者の内部被曝問題研究会
リンク:朝日新聞に掲載された市民と「科学者の内部被ばく問題研究会」の調査結果に関する記事
内部被ばく問題研究会の発表によると、この団体の測定値は、モニタリングポストの値よりも10~30%高かったそうで、原因はモニタリングポスト装置脇の鉛のバッテリーが遮蔽効果をもたらし、放射線量が低く測定されている可能性があることを指摘しました。グラフや計算式は公開したものの、その元となっている生データは公表しませんでした。内部被ばく問題研究会は、政府が意図的に測定値を歪めていると批難しました。

一方、グリーンピースは定期的に放射能測定調査を実施し、モニタリングポストの精度を確認していますが、ほとんどの場合、測定値は正確ではなかったと結論付けています。

リンク:福島市内のモニタリングポスト 信頼性に疑問 (グリーンピース)
リンク:偽装された希望 – 福島県内の放射線モニタリング(グリーンピース)

グリーンピースはかなり体系的な調査方法を取り入れ、信頼性の高いガンマ線スペクトロメーター(Georadis RT-30)を使って、10センチ、50センチ、1メートルの高さから、そして5メートル、10メートル、15または20メートル離れた地点で放射線量を計測し、福島市内に設置された40基を調査を実施しました。

グリーンピースのモニタリング・ステーション調査結果データ (pdf)

グリーンピースは、「調査した40カ所のモニタリングポストのうち、75%に該当する30カ所が周辺の放射線量より低く表示されていました。モニタリングポストから半径25m以内の放射線量を計測した結果、モニタリングポストの表示より4.5倍も高い放射線量を計測した場所もあります」とウェブ上で報告しています。

グリーンピースのスプレッドシート・データを見て気付いたのですが、グリーンピースが各モニタリングポスト脇、かつ地面から1メートルの高さで測定した線量よりも、モニタリングポストによる測定値の方が高く記録されています。この点に関してはまだ良しとしましょう。問題なのは、モニタリングポストの測定値が周辺地区の汚染状態を正確に映し出しておらず、場合によっては半分以下のレベルに下方報告されてしまっているという点です。後述しますが、モニタリング・サンプルが特定地域の平均値を示すためのものであるなら、どの近辺の放射線量が高めなのか、また低めの地域はどこなのかまで探し出すべきだと思うのです。そうすれば、モニタリングポストが特に数値の高いところ(または低いところ)に設置されているのかどうか推測できます。

そうは言っても、本当の線量を知る唯一の方法は、体系立てた方法でモニタリングポストを中心にいろんな方向に向かって測定していくしかないのです。上記で触れたグリーンピースのエクセルシート上のデータを見ると、2、3カ所ではそういう測り方をしたようですし、その測定値を結論付けに使っているようです。675か所に設置されたモニタリングポストを調査し、周辺地域をマップ化してどれが「放射線量が低めのスポット」なのかつきとめるようとすれば、極端に費用も手間もかかります。しかし、ここで大切なのは、一般の人々が測定値をどう把握しているのかという部分です。仮にセンサー機器の精度が高くても、数メートル離れただけで数値が全く変わってしまうという事実を知らないままモニタリングポストの測定値を見たり、文科省のマップを見ていたら、かなりの人がその地域の放射線レベルについて誤った印象を持ってしまいます。セーフキャストでは、モニタリングポストが往々にして「放射線量の低い場所」に設置されている事実を示すことができますが、政府はこういった状況に対して十分な説明をしていません。これでは一般市民は、モニタリングポストは周辺地域よりもきっと低めに放射線量を測定しているのだろうな、納得してしまうでしょう。

我々もモニタリングポストの調査を行い、実際にどのような数値が表示されるのか確認してきました。

グレイ(Gy)は吸収線量測定に使われる単位であるのに対し、シーベルトは実効線量あるいは等価線量の単位として使われます。後者の方がみなさんも良く耳にすることでしょう。ガンマ線放射能やベータ線放射能を見る際、単位そのものが意味するものは違いますが、グレイやシーベルトは数値上では等価(1リットルの水の質量は1キロであるという体積と質量の法則みたいな感じです)にあるのですが、このドロイド(モニタリングポスト)の単位表示は一般市民にはちょっと紛らわしく感じられるかもしれません。

この写真のモニタリングポストはライノテック工業製で、会津若松市の大戸小学校校庭に設置されているものです。このモニタリングポスト、何かしらの故障が生じているのが写真から分かります。放射線量を表示するディスプレイがガムテープでわれています。どうやらライノテック社の機器は特に故障しやすいようです。
最新情報:文科省によって放棄されたため、当然の処置だと考えられます。


これは福島県の天栄(てんえい)村にある湯本小学校に設置された富士電気製のモニタリングポストです。我々が確認した範囲では、この機種が一番多く設置されていました。小型ソーラーパネルが装備されており、ドーム型の本体から離れたところにディスプレイがあります。本体ケースにはベンチマークとなる地表から50センチ、そして1メートルの高さを示す印があります。初めて見たとき、それぞれの高さに取り付けたセンサーが2つ内蔵されているのかと思っていたのですが、実際には50センチ、または1メートルの高さのどちらか一方に合わせてひとつだけセンサーが取り付けられていました。上の写真の場合は50センチの高さでセンサーが取り付けられていました。富士電気製であれ、ライノテック工業製であれ、小学校に設置されている場合、センサーは50センチの高さに、それ以外の場所では1メートルの高さに取り付けられていました。どういうわけか、このセンサーモジュール内部に取り付けられたディスプレイでは、外側にあるディスプレイが表示する測定値よりも高い線量が表示されていました。内部モジュールの方は、平均値をとる時間のスパンが短めに設定されているのかもしれません。このモニタリングポストの場合、内側、外側双方のディスプレイ表示値は10分経過しても何の変化も見られなかったので、検知システムの時定数はかなり長めに設定されているのでしょう。

上記の写真は、伊達市の駐車場に設置された日立アロカメディカル社製モニタリングポストです。アロカでは背丈の低い箱型タイプは2機種作られていますが、これはそのうちのひとつです。下の写真が示すように、アロカのモニタリングポストはたいていフェンスで四方を囲まれています。また、放射線量測定以外のセンサーも装備されており、線量測定単位にはグレイ(Grays)が使われています。

これは福島県南会津郡舘岩村に設置された富士電気製のモニタリングポストで、「小箱」型タイプのものです。放射線センサーは小さいドーム状の筒の後方に搭載されています。他の環境センサーも装備されています。これは先ほどご覧いただいた写真(セーフキャストのメンバーが3つのセンサーをかざして測定した時に撮ったもの)に写っているのと同一の機器です。

似たようなモニタリングポストを製造しているのは、NEC(トップ・ページの写真)、日立アロカメディカル、富士電気(2機種製造しています)、そしてライノテック工業の4社です。全てソーラーパワーで電源が供給され、インターネットに接続されています。内蔵されている検知器には高性能のシンチレーターが使われているようです。セーフキャストでは、実際に数十以上のモニタリングポストを確認しましたが、表示されている数値が我々のガイガーカウンター測定値と食い違っていることも多々ありました。その一方で、セーフキャストのRadEyeシンチレーターで測定した線量値はモニタリングポストの数値と近い数値を示していました。測定値が毎時0.1マイクロシーベルト未満の場合、測定値のばらつきが大きくなることは確認されています。セーフキャストはライノテック工業製モニタリンクポスト12基ほど調べましたが、そのうちきちんと稼働していたのはたった1基だけでした。たまたまプログラムが意図的に稼働停止していたのかもしれませんが、製造工程での欠陥が見過ごされてしまっていたのかもしれませんし、ディスプレイ部分の防水に問題があってメインテナンスが難しいといった問題があったのかもしれません(下の写真参照)。

最新情報: 郡山のセーフキャストボランティアがライノテック社製ドロイドについてさらなる情報を提供してくれました。この製品はアルファ通信社により製造されたのですが、最初の契約では3億7千万円で600台の受注でした。アルファ社が設置した後、文科省が同社との契約を切り、加えてさらに2100台をNECと富士電機から注文したと発表しました。文科省は、ウェブサイト上で、この理由を「(同社が)契約上の納入期限後、受注業者による技術仕様の達成の見通しが立たないまま、1か月を経過してもなお納品が履行できない状態のため」と説明しています。
多くのブロガー達がこの件についてコメントしており、文科省がアルファ通信がどのスペックを満たしていなかったのか、どのように装置がテストされていたかが明確でないと指摘しています。

Geiger Counter Blog report about Alpha Tsushin contract problems (Japanese)

MEXT notification of cancellation of Alpha Tsushin’s contract (Japanese)

これはNEC製のモニタリングポストの内部です。この機器は大半が規格品のパーツを使って製造されており、良品質のものです。検出器は上方中央部に取り付けられているベージュ色の箱の部分になります(浜松ホトニクス製)。 NEC製モニタリングポストではアナログ・タイマーが使用されており、夜7時にはディスプレーが消えるように設定されています。この機器の場合、時計が止まっていました。また、他の場所に設置されたNEC製の機器では、時間設定がずれてしまっているようでした。

これは富士電気製のモニタリングポストの内部です。NEC機種と品質も構造の複雑さも同等レベルで、やはり規格品のパーツが使用されています。黄色の部分がシンチレーターで、地表から50センチの高さに取り付けられています。シンチレーターも富士電気製です。

こちらは会津若松市に設置されていたライノテック工業社のモニタリングポスト内部です。検出器(シンチレーターの製造元は不明)は、地面から50センチの高さ、右側下部にある灰色の小さな箱の内部に配置されているようです。ライノテック工業社の機器は背丈の高い大き目なタイプのモニタリングポストですが、内部のパーツ数は一番少なめです。「経費節約」型モデルなのかもしれません。

ライノテック工業社のモニタリングポストの場合、放射線量が表示されているのではなく、「初期化中」というメッセージが表示されたままになっているのをよく見かけました。

最新情報:これらの装置は太陽光を蓄電して稼働するよう設計されていました。そして事実、一年以上放置されていたにも関わらず、そのうちの多くが稼動していました。エラーメッセージが出ていたのは、恐らく政府によってキャンセルされた携帯電話のアカウントにシステムが繋がろうとしていたためだと考えられます。(携帯電話の電波を利用してデータ送信をするよう設計されている。)

このライノテック社のディスプレイでは、表示が「初期化中」でフリーズしているだけでなく、内ガラスに結露が発生しています。

では、除染効果の方はどうなっているのでしょうか。何百基ものモニタリングポストが公園や学校、遊び場などに設置されていますが、こういった場所は子どもたちが安心して使えるよう意図的にポスト設置以前に除染してあります。また、表面の土の入れ替えが行われていますが、これは業者間では一般的に行われる除染方法ですし、放射線測定値を意図的に下げようとしたわけではないかもしれません。

しかし、我々はモニタリングポスト周辺の路面が新たにきれいに修繕されているケースを実際に何度も確認しているので、整地した理由を正当づけようとするのは難しいことのように思います。例えば、福島市内で最近見かけたモニタリングポストでは、福島駅近くの人通りの多いところではなく、駅からある程度離れた目立たない場所に置かれていました。駅周辺にある唯一の小さな緑地です。これはつまり、コンクリートと土壌の地面とでは、放射性物質の吸収力が違ってくるので、駅前よりはこの緑地公園の放射線量率の方が低めに出るということです。モニタリングポスト周辺小道のアスファルトは、真新しく、汚染されていないものに差し替えられています。セーフキャストが公園の古いアスファルト路面を測定した際の放射線量は、4~5万ベクレル/平方メートルだったのに対し、ポスト前の新しいアスファルト路面では、線量はほぼゼロ(背景放射線量を計測して機器を調整した後)でした。モニタリングポストに表示された線量率はセーフキャストのガイガーカウンター(bGeigie nano:bガイギー・ナノ)の数値に近く、毎時0.28 マイクロシーベルトでした。一方、セーフキャストによる福島駅周辺での測定線量率は毎時0.3~0.5マイクロシーベルトでした。

これが福島駅近くの緑地公園の小道に設置された富士電気製モニタリングポストです。機器の前方部だけ、ごく最近、舗装されたのが分かります。

モニタリングポスト前で、bガイギー・ナノを使って放射線量を測定。結果は、ほぼ同値でした。モニタリングポストでは毎時0.286マイクロシーベルト、bガイギーでは毎時0.29マイクロシーベルトでした(測定値が見えやすいように、ここでは防水カバーを外してbガイギー・ナノを使用しています)。

新しいアスファルト路面ではbガイギー・ナノから87CPM(counts per minute)という数値が検出されました。

数メートル歩いて舗装され直していない古いアスファルトの上に同センサーを置いてみると、1000CPMと測定されました。このモニタリングポストを設置した責任者たちは、放射線量を下げようと周辺だけ意図的に除染をしたのでしょうか。このことを確認するのは困難ですが、ただ、断言できるのは、モニタリングポストが検出した放射線量は機器のごく周辺のみの数値しか反映していないということです。ほんの数メートル離れただけで放射線量が大きく上昇してしまうのですから。

同様の事例を福島大学でも確認しました。同校の駐車場で測定された放射線量率は毎時0.4マイクロシーベルト前後でした。それに対して草むらに設置されたモニタリングポストの数値は毎時0.23マイクロシーベルトでした。

複数の市民団体からの批判を受け、政府は2012年11月にモニタリングポストのバッテリーが放射線を遮蔽し、検出値が過小表示されていたことを認め、バッテリーの位置を移動させる工事を行うと発表しましたが、この改修費は約1億5000万円にのぼると言われています。この工事を行えば、一割低く放射線量が計測されてしまう問題は解決されると期待されていますが、実際にはそれ以上の問題を抱えており、そう簡単には解決できないのではないかもしれません。結局のところ、一般市民にとってできるだけ「分かりやすく、使いやすい」ものを作りたいのか、それともユーザーにとっての使いやすさなど気にもせず、できるだけ「使いづらい」ものを作りたいのか、といった議論に戻ってしまうのです。モニタリングポスト発注の際の仕様書内容やユーザビィティはどうあるべきかといったことが、きちんと議論されないまま入札がきまってしまったのではないか、また、情報提供の場のオンライン・システムも、市民がどのような情報を、なぜ必要としているか、どういった形で情報提供されるのがベストなのか、また、誰が監督すべきかといったことが十分に配慮されないままシステムが作られてしまったように思うのです。その代わりに、おそらく官僚たちがモニタリングポスト製造会社から情報をかき集めて必要最低限レベルのスペックをもとに可搬型モニタリングポスト整備業務仕様書を作成し、発注し、入札が入ればどの会社であろうと受注させたかのようにもみえます。そして実際の設置作業は、放射線量測定などには興味も関心もない下請け会社に任せてしまったのです。また、ウェブサイト作成も外注し、一見したところよくできているようですが、実際には非常に使いづらく、誤解を招きかねないほど分かりにくいサイトになっています。この件で、多くの関係者が私腹を肥やしたのではないかと思われます。

伊達市の小国小学校にも「ダブル・ドロイド(重複した二基のモニタリングポスト)」が近距離内に設置されています。


川内村の公園でも二基のモニタリングポストが比較的近距離に置かれていました。

モニタリングポストの設置場所やポスト周辺部の除染を正当化するうわさをいろいろと耳にします。例えば、除染作業が完了したときにどれぐらい放射線値が下がったかを確認するためだとか、背景放射線量を低くしておくことで急に放射線量が増加してもすぐに気づけるようにしておくために除染をしたのだといった内容のものです。

また、計画性がないまま設置されてしまったかのようなモニタリングポストをいくつも目にしてしまうと、放射線量を欺いて測定しようとしていたのではないか、もしくは機器の設置がうまく進まなかったからそうなってしまっただけなのだろうか、と勘繰りたくもなってしまうのです。その一方で、実際には、政府は市民を欺くようなことなんてしない、政府側は全く知らなかっただけだったのでは、とも言い切れないのです。もちろん設置されたモニタリングポストはある程度の目安になるので役に立ってくれています。でも、測定された数値は、あくまでもその設置された地点のみ有効な放射線量値であって、その地区の放射線レベルを正確に平均値化したものではないということをはっきりと説明すべきです。技術面の知識がある人であればきっとお気づきのことかと思いますが、「このモニタリング数値はポストの周りの極狭い周辺のみの測定値です」と明記したプレートを立て掛けるべきですし、そのエリアがどれくらいすでに除染されたか、また除染作業はいつ行われたかといった情報もモニタリングポストのところに公開すべきです。ウェブサイトでも同様の情報を明確に説明すべきでしょう。

実際に、千葉県の柏市などの町では全ての公園や遊び場、学校や公共の場を定期的に放射線量測定し、時間推移に合わせて数値の変化が分かるようにオンラインでデータを公開しています。柏市の公園や遊び場では、いろいろな場所で何度も放射線測定を行い、放射線マップにして公園の入り口に張り出しています。オンラインでも確認することができます。非常に簡単な方法ですが、市民に伝えるには効果的ですし、分かりやすいです。この例から分かるのは、責任者がいる状況下で、現場での放射線量調査が定期的に行われ、測定値の記録も継続しているということです。

リンク:千葉県柏市向井山公園の放射線マップ

依然として必要なのは、特定の選ばれた場所だけの線量を表示するのではなく、広範囲にわたる地域を代表する放射線量測定値を表示しつつも、実際の汚染詳細状況を反映する公的なモニタリングシステムなのです。では、具体的にどうすればいいのか尋ねられた場合、セーフキャストとしては以下のことを提案します。
— モニタリングポスト設置周辺の地面の扱いには一貫性を持たせる
— 各モニタリングポストの性能や(放射線量測定に関する)限界などの情報をきちんと表示する
— モニタリングポストの半径100メートル周辺地域を定期的に測定して作成した放射線マップを機器に貼る
— 各モニタリングポストに関する問い合わせ連絡先(電話番号、eメールアドレス、ホームページアドレス等)を明記する
— ホットスポットの場所や広範囲をカバーする平均放射線量情報を含んだ、もう少し使い勝手の良いウェブサイトを作成する。また、他団体のデータセット(例えば、セーフキャストのデータセット)と比較できるよう、モニタリングポストによって集計された全てのデータセットを一般公開する
最後に、我々は、近隣住民側にもモニタリングポストを「所有している」という認識が必要になってくるのではと思っています。つまり、長期にわたって責任を持ち、見守りつつも異変は見過ごさず、周辺地域の測定値と比較したり、システムの管理者とも連絡を取り合ったりする必要が出てくるのではないでしょうか。こういったことを可能にするには、当然、モニタリングポスト運営サイドの人たちの迅速な対応が必要になりますが、残念ながら今のところそういったことはなされていないようです。

下の写真はセーフキャストのお気に入りモニタリングポストです。田村町の学校給食調理室横に設置されており、他のモニタリングポストとは異なるタイプのものです。

この機器が置かれてある駐車場の上限測定値は駐車場で測定されたもの、下限測定は屋内の台所の線量を表しています。機器の問い合わせ先として、連絡先が記載されたプレートがすぐに目につく形でポストに張り付けられていました。


この表記には、他のモニタリングポストでは見つからないような関連のある有益情報がたくさん記されています。よく見てみるとImages SI, Inc社製造とあり、測定誤差範囲は±20%、線量測定範囲は毎時0.01マイクロシーベルト~5シーベルト、ガイガーミュラー計数管使用検出器が地面より一メートルの高さに設置、平均サンプル値は60秒ごとに更新して表示、という説明書きがあります。また、測定値はあくまでもガイドラインとしてのみ捉えるようにとの但し書きもあります。そして屋外の駐車場、そして屋内の測定値が両方とも記載されていました。連絡先やテクニカルな情報も書かれていました。だからと言って、これこそが私たちの探し求めている完璧な「ドロイド」(モニタリングポスト)というわけではありません。ただ、この場合、少なくとも誰かが責任を持って管理しているのが分かりますし、どんな情報を人々は求めているのかといったことにも考慮されているのが分かります。ですから、この例からも分かるように、皆でモニタリングポストを管理していくことは実際に可能なのです。皆でモニタリングポストがきちんと機能しているかどうか見守って管理していけばいいのです。

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翻訳:Akiko Henmi

About the Author

Azby Brown

Azby Brown is Safecast's lead researcher and primary author of the Safecast Report. A widely published authority in the fields of design, architecture, and the environment, he has lived in Japan for over 30 years, and founded the KIT Future Design Institute in 2003. He joined Safecast in mid-2011, and frequently represents the group at international expert conferences.